別に他人の情事を覗く趣味はない。
ただそこが1番楽そうだったし給料もそこそこだったから。
ゾロがバイトしているラブホテルは裏通りの外れにあり、利用する客も滅多にいない。
せいぜい愛用者か酔っぱらい迷い込んで来た客位だ。
しかも、酔っ払いはリピート客になる事はあまりなく、実際数少ない愛用者で成り立っている状況だ。苦しくはあるが、それ程大きな規模のホテルではないため十分やっていけている。
まぁ、そんなこと一受付係のゾロにとってはどうでもいい事だったが。
「よう、ゾーロ」
ぼんやりとフロアを箒で掃いているとよく知った声で名前を呼ばれた。
数少ない常連客であるサンジだ。
サンジはゾロと同じ19才のくせにいつもスーツを身につけ、違法である煙草を加えてやって来る。
そのせいでたいぶ年上に見えるので誰も違法をしているとは思わないのだろう。
ニコニコと上機嫌で手を振るサンジにゾロはいつもの台詞をはく。「今日もかお盛んなことだなサンジ。今日はどこの女だ?」と。
そしてサンジがメロリンと飛び切りのカワイイ子だとか美しいお姉様だとかを喋り出す。
これが二人の間での挨拶となっている。
それからしばらく喋り、やって来た女の手を取りサンジは部屋に消えていく。週3回はこのパターンだ。
「こんな所まで女を一人で歩かせるな」とか「迎えに行け」とかいつも言っているがサンジは必ず早めに来てゾロの時間を設ける。
それがゾロにとっては何とも不思議な事だった。
サンジの事は嫌いではない…変わり者で特別好きな訳でもないが、友達がいたらこんな感じなんだろうなと思うくらいだ。
あとサンジ必ず深夜12時〜半の間に来て3時には帰っていく。この行動から普通の会社員ではく、何か違った職に付いているのだろうとゾロには伺えた。
分かっているのはそれ位。
かなりのペースで話してはいるがサンジの事は何もわからなかった。
ゾロも詮索しないし、サンジも話したがらない…ゾロはそんな所も気に入っているが。
自分を分かってほしくて口だけで語る奴なんてウザイだけ。
分かってほしいなら素で来い。
そうしたら全て受け止めてやる。
それがゾロの信念だ。
そうしてサンジは人嫌い、世間嫌いのゾロのお気に入りになりつつあった。
次の日のいつもの時間、サンジまたホテルに来ていた。
「2日連続かよ…そんなにいいもんか?」
「…んん?その発言…ゾロってばもしかして童貞?」
ぼんっと音がするくらいに真っ赤になったゾロに何だか嬉しさを感じたサンジは、緑色の頭をくしゃくしゃと撫でた。
思ったよりもずっと柔らかい髪の毛と嫌がられないことに浚に嬉しくなったサンジは、ゾロの頭をガシッと掴み苦しくない程度のヘッドロックをかけ、おどけ口調で「よしよし、今度オニーサンがいい子紹介してやるからよ」と呟く。
苦しい!だの、いてぇ!だの叫んでいたゾロはそれを聞いた瞬間急に大人しくなり「別に…急いで無くすもんでもねぇだろ」とふて腐れたように呟いた。
顔は見えないがきっと口を尖らせ眉間のシワが濃くなっているだろう。
それを想像したサンジはゾロが可愛くて可愛くてしょうがないというほどにヘッドロックの力を強めた。
サンジの服を握るゾロの力が強くなってきた頃、やっと頭を開放してやるとゾロは一歩下がってサンジを睨み付けた。
その顔は・・・・・・・・
「ゾォーロォー!」
「うわ、ルフィ!こんな時間にガキが来ていい場所じゃねぇぞ!」
「…ゾロ顔赤えぞ?なんか目も潤んでるし…風邪か?」
そう。ゾロに抱き着いて来たルフィと言う少年の通り今のゾロは男のサンジでも見惚れるくらい可愛かった。
いつものキリリとした顔達からは考えられないほど、怒ったような拗ねているような顔で紅潮しているゾロ。
思わず抱きしめそうになって延ばした手は、ルフィによって阻止された。
とゆうか、ルフィに先を越されてしまったと言ったほうがいいだろう。
正面から頭を抱え込むように抱き着かれ、手を延ばしたまま固まるサンジと、またか、と呆れているようなゾロ。
「ゾロかわいー!」
「男に可愛いとか言うな!抱き着くな!」
本気を出せば引きはがせるが、なすがままにさせているゾロ。
じゃれているだけなのだろう。
サンジは行き場の無くなっていた手を戻し、掌に跡がつくくらい力強く拳を握った。
ぎゅうぎゅうとゾロに体をくっつけていたルフィの真っ黒な瞳がいきなりサンジに向けられ、サンジはビクリと身を固まらせた。
「ゾロ、誰だ?こいつ」
「あ、サンジといってな。オレの…友達だ」
「よろしくな」
サンジは友達と言う部分に嬉しくなり、同時にルフィの目が一瞬鋭く自分を貫いたのが気になったがゾロの手前喧嘩を売るわけにもいかず、にこやかに握手の手を差し延ばす。
あの目付きが嘘だったかのような人懐っこい笑顔でルフィがゾロに抱き着いたまま握手に応じた。
「ふ〜ん……オレはルフィ。よろしくな。…ふぁ…ねみぃ〜ちょっと寝る」
「家帰れ。…今仮眠室にはエースがいるぜ」
「げっ…じゃあフロントでいーや。寝る前にメシ!腹減った」
「てめ…また俺のまかない食う気か…あ!待てっ!…ったく、あほ兄弟め」
「ゾロ…今のは?」
ルフィの姿が見えなくなった事を確認してサンジが切り出す。
すっかりゾロの顔も元に戻っており、サンジは残念やらほっとしたやらでまともにゾロの顔が見れず煙草を加えて横を向いた。
ゾロも気まずいのかルフィが消えていった方向から視線をずらさずに口を開く。
「今のは…」
「ルフィ。俺の弟だ。ったくこんな偉大なオレに向かってあほとは言ってくれるじゃねぇか…ゾ〜ロ」
「エースッ…」
ゾロの背後からいきなり手が延びてきて、今度は見知らぬ男に抱きすくめられたゾロ。
さっきのルフィとは違い体格差もあまりなく、ゾロが本気で抵抗してもそう簡単には抜け出せないだろう。
しかも体制的にもかなり不利だ。
男はそのことを利用してゾロの左耳にふぅ…って息を吐きかけ、片手をなんとゾロのシャツの中に滑り込ませた。
「は…んんっ!やぁ…」
とたんゾロから零された甘い吐息にサンジの神経が下半身に集まってしまう。
こんな声も出せるんだ。ヤベ…ゾクゾクする。
ゾロが抵抗出来ないのをいい事にエスカレートしていく行為。
耳をねっとりと嘗め上げ、軽く甘噛む、そのたびにひくりと震えてくぐもった声を出すゾロ。
そして止めにもはいらず、それにくぎづけのサンジ。エースの指がゾロの乳首を摘んだ瞬間「ああっ!」とゾロが上げた声で我に帰ったサンジは慌てて止めにはいった。
「はっ!す…すとーっぷ!」
「ああ?」
ギロリとルフィ以上に睨まれたじろぐサンジ、しかしここで負けるわけにはいかない。くったりとしているゾロの為。
「そこまでだ…ゾロを離せ」
「誰だアンタ?」
「オレはサンジ、ゾロのダチだ」
「ゾロのねぇ…」
頭のてっぺんから爪先まで品定めをされるように見られ、しかもこの気迫だ。
一瞬でも気を抜けばへたりこんでしまいそうでサンジ必死に気をはった。
いつまでも続きそうな睨み合いの間を割ったのはエントランスの自動ドアが開く音と綺麗な女の声だった。
サンジを見つけるなり栗色のウェーブかかった長い髪をなびかせ近づき、ふくよかな胸に押し付けるようにサンジの腕を掴む。
余りにもキツイ香水の匂いにエースが片眉を動かした。
「サンジさん見つけた〜。ごめんなさい、遅れちゃって…」
サンジはそこですでに午前1時を回っていることに気付いた。
確かに折角の夜だ…美人と思いっきり楽しみたい。だが、何故か今は…。
チラリとソファに座るゾロの後ろ姿を見た視線に気付いたエースはニヤリと口角を上げ、一流ホテル並の応対を見せた。
「いらっしゃいませ。チェックインは出来ております。こちらがルームキーになります。ごゆっくりどうぞ…」
勿論チェックインなどしてないサンジは戸惑ったが、女がルームキーを受け取り歩き出したので仕方なく後に続いた。
エレベーターが閉まる瞬間見えた、勝ち誇ったエースと呼ばれた男の顔にムカつきながら。
サンジが女と部屋に入って一時間ほどたっただろう。
フロントの奥で眠りこけているルフィとエースにため息をつきながらも毛布をかけてやり、暇潰しに持ってきている週刊誌を手に取った。
ところが表紙を開こうとした時、先ほどサンジと一緒に部屋に入っていった女が凄い形相でエレベーターから降りて来て、ゾロを一瞥するとそのまま出て行った。
びっくりしたゾロは呼び止めることも出来ず、また余りにも普通ではない女にサンジの身が心配にもなり受話器を手に取った。
刺されたりしてねぇだろな?
「サンジ?」
「………」
「おい?聞こえてんのか?サンジ!」
「…ゾロ…助けてくれ」
ゾロは乱暴に受話器を戻し、サンジの部屋まで走った。
ドアを叩いても中から応答はなく、スペアキーで開けて入ってみればサイドライト一つ照らした部屋のベッドの上にサンジが素っ裸で放心状態で座り込んでいる。
とりあえず刺されたりしていないことに安心して虚なサンジに近づく。
「サンジ?どうした?」
「…た…った…」
「は?」
「女の子に勃たなかった…」
なんだそりゃ。
ゾロは余りにも力の抜ける返答に脱力した。
そんなことゾロには特別たいした問題ではない。
しかしあの女好きの塊であるサンジが勃たなかったなんて…しかも相手は美人なお姉さん…それはよっぽどの事だと思ったゾロは余り刺激しないように喋りかけた。
「まぁ…疲れてると勃たなかったりするってゆーし…調子が悪かっただけだって、気にすんなよ」
「………だけど、お前を考えると…どうしようもなくなっちまう」
オレどうしたんだ?と頭を抱えるサンジ。
男を想って勃つなんて。別にそうゆう人に対して偏見や嫌悪感は持ったりしない。
どんな趣味を持とうと自分の勝手だし、ゾロには関係ないから。
実際、受付をしていても男同士で部屋を取る人だって少なくない。
ただオレに勃たれても…オレはホモじゃない。だけど、サンジは数少ない友達だ。どうにかして真っ当な道に戻してやりたい。拒否したからといって離れてなんかいかない。嫌ったりしないから。
「サンジ…オレは…」
「…ゾロ!」
顔を上げたときもうすでにキスされていた。
後頭部の髪の毛を力強く捕まれ、噛み付かれるような激しいキスにゾロの意識が朦朧としてくる。
苦しさにサンジの胸を押すが全くびくともせず、サンジのなすがまま口内を荒らされた。
長いキスから開放されると、愛しく優しい手つきで頭を撫でられ霞かかった意識の中でゾロは困惑を感じる。
なんでこんなことするサンジと、嫌ではなかった自分に。
不意にうっとりとゾロの頭を撫でるサンジの手に力が篭り、下を向かされるように誘導される。
「…っ!?サンジ!…待てっ…やめろよっ」
思惑に気付いたゾロは慌てて抵抗を始めるが、サンジが力を緩めることはなかった。
向かった先は、サンジのいきり立ち先走りを零しているペニス。ぐっと頭を押されペニスがゾロの唇に当たる。
何処かからくる罪悪感から自慰もろくにしないゾロには直視できない。
頑なに唇を閉じて抵抗しているとサンジの熱い余裕のなさそうな声が聞こえた。
「は…ゾロ…口開けて…」
しばらくこの攻防が続き、唇や頬に先走りを塗り付けられ、顔中ベタベタだ。
ふとサンジがせつなそうにゾロの名前を呟くと、押さえ付けられていた力が緩み、その隙にゾロが起き上がる。
「…ってめ……んぐっ!」
非難の声を上げようと口を開けた時、再び力が込められゾロはサンジのモノをくわえ込んでしまった。
口に広がる初めての苦みに嘔吐感が込み上げてくる。
「んんっ!…ぐぅ…」
「はぁ、ん…ゾロ…ゾロ」
両手で頭を捕まれ激しく上下に揺すられ、視界がそのスピードについて行けない。
じゅっじゅぷ…。
サンジの手が早さを増し、吐く吐息にも余裕が無くなり絶頂が近づく。
「あ…あ、っく…ゾ、ロォ…!」
サンジの熱い声と同時に、ゾロの顔面に飛び散る白濁。余りの量の多さに髪の毛までをも汚している。
ゾロは垂れる精液を乱暴に拭き取り、赦されざる仕打ちに一発殴ってやろうとサンジにつかみ掛かった。
ところが、ゾロ以上に放心状態のサンジに驚愕し、振り上げた拳をポスンとシーツに落とす。
その微かな衝撃にもビクリと反応したサンジの青い瞳が潤み、ボロボロと涙を流す。
「…どうしちまったんだ…お前」
ゾロはどうしていいか分からず、俯いて涙を流すサンジの頭をぽんぽんと優しく宥めた。それはサンジの涙が乾くまで続いた。
「…悪かったな、ゾロ。オレどっかおかしかったみてぇだ…」
「…そうだな」
「……さて、帰るか。また来るぜ」
極力ゾロを見ないように立ち上がり、背を向けた。
本当はもう来るつもりはない。前の様に接することなど出来るはずがない。出会ってからそんなに時間はたってないが、こんなに気の合うやつにはもうあえないだろう。
サンジは後ろ髪引かれながらも扉に手をかける。
「ダメだ。あと15分したら終わっからそれまで待ってろ。それにてめぇもう、来ねぇつもりだろ…いつも、また来るなんて言わねぇくせに…」「…な」
「…んな不安定なてめぇ一人にしておけっか…始発もまだだし、今日はオレん家来い。嫌とは言わせねぇ」
口数のかなり多い事と、心の中を読まれた事に動揺し思わず首を縦に振ってしまった。
それに、こんな怖いゾロは今まで見た事のない。相当怒っているのかもしれない。
サンジは大人しく従い、ソファに腰掛けた。
「…連絡したら下りてこいよ」
「わかった…」
「先帰んなよ」
フロントに戻って来たゾロは、一人残され不機嫌そうに雑誌を眺めているエースに謝りつつ残りの仕事を片付けた。
途中、頭にゴミがついているとエースに取ってもらってから、どこ行ってたとか、ぐるまゆはどうしたとかしつこく聞かれたがゾロは今それどころではなく、ただただ無心に仕事に励んだ。
お陰で定時内に全て終わり、急いでサンジに連絡した。
「エース。お疲れ様」
「ああ、お疲れ〜…っと、何でてめぇ等一緒に帰るんだ?」
「今日オレん家に泊めてやるんだ。…こいつ調子悪くて。じゃあな」
確かに横でぼーっと立っているサンジは様子がおかしい。
暗い、ゾロを見ない、ため息そして泣きそう。
エースは瞬間はっと気がつく。
ぎこちない二人に、ゾロの髪に着いたカピカピした白いモノ…。
オレのゾロに手ぇ出しやがって…顔射まで…サンジね。何時でも潰せるように覚えといてやる。
取敢えず、ルフィとシャンクスにちくっとこ。
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サンジは無意識にゾロに会いに来ていたけど、それを認めたくなくて…気がついてショックやらすっきりしたやらでどうしていいか分からなくなって凹んでいると。シャンクスも出したかった…
裏に置くほどのものではないですが・・・一応そうゆう描写があるので・・・